「答えは現場にある」中国人コンサルタント顧兪清、袁鵬

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2008年に中国国内の第1号案件を獲得以来、40を超える企業に導入されてきた「mcframe CS」(現海外拠点向け生産・原価管理)。B-EN-G上海で開発とコンサルタントを務める顧兪清(こ:GU YUQING)と袁鵬(えん: YUAN PENG)のふたりに、中国でmcframe CSが支持される理由を聞いた。

日本のノウハウを中国に

企業基幹システム部の第1課長を務める顧と、企業基幹系統部で開発のプロジェクトマネージャーなどを担当する袁は、共にB-EN-G本社での開発経験を経て、駐在員事務所の頃からB-EN-G上海を支えるベテラン社員だ。日本語も堪能で日本の企業文化への理解も深い。数多くの中国国内の導入案件を手がけてきた両者にmcframeの強みを尋ねると、「多くの導入実績で培われた、製造業に必要な日本のノウハウが詰まっている点」と口を揃える。

顧は「中国の製造業は急速に発展している反面、システムを使わずエクセルベースで生産管理をしている企業も多い」と中国の事情を語る。mcframeは「立ち上げ期」や「成長期」、「成熟期」など企業の成長段階に合わせて機能が選べるため、こうしたエクセルを利用している企業にも導入がしやすい。まずは「立ち上げ期」向けの実績と在庫管理機能を利用してもらい、システムを使った管理作業に慣れてもらう。次のステップでは、ライセンスをアップグレードするだけでM R P(所要量計算)などの機能を追加できるという具合だ。ユーザー側でカスタマイズや開発の作業は発生しない。

「mcframe CS」では、ステージに応じた導入メニューや利用プランを用意

「mcframe CS」では、ステージに応じた導入メニューや利用プランを用意

 

袁鵬
袁鵬

袁は「もちろん生産管理機能は優れています」と前置きした上で、「一番の強みは原価管理にある」という。

中国では原価管理というと決算書作成を目的とした、財務会計のための指標としか捉えていない企業も多く、分析して経営戦略に生かすという意識は低いという。mcframeは「標準原価」、「実績原価」、「実際原価」、「予算原価」の4つの原価計算ができることに加え、部門別やライン別、得意先別など様々な項目で原価計算ができる。

「これらの原価情報を経営管理に結びつければ、中国企業はもっと成長できる」と袁。これから中国企業が自国生産から海外生産に移行していく上でも、グローバルに原価管理を行える土壌を整備することは重要だ。

日本式×ローカライズ

ふたりは標準機能に頼るだけではなく、中国特有のニーズに合わせた改善にも取り組んでいる。中国では完成品を海外に輸出している工場も多いが、輸出申請に時間がかかることが担当者を悩ませている。輸出型の工場では、注文を受けた時点では在庫がなく製品の完成を待って出荷するというケースも多い。このような場合、輸出申請に要する時間を見越して完成後すぐに製品を出荷できる状態にしておきたいところだが、mcframeでは該当製品が完成して在庫にならないと出荷指示ができない仕様になっていた。

ユーザーの輸出までのリードタイムを少しでも短縮したいと考えた顧は、B-EN-G本社に仕様の変更を打診する。本社は顧の思いに応えて受注登録の時点で製品の在庫がなくても、受注情報から梱包やインボイス発行など輸出と出荷にまつわる項目を出力できるように仕様を変更した。日本式を強みとしながらローカライズも怠らない、B-EN-Gを象徴するエピソードだ。

 

「答えは本にはない。現場にある」

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B-EN-G上海 顧兪清

この10年間でふたりが担当した企業は、化学品や樹脂、自動車部品、組立工場など様々。業種によって考え方や求める要件が異なることに加え、担当者の経験値や能力によっても難易度は変わる。あらゆる業種のニーズに応えるために、たくさんの本を読んで勉強したという袁は、「勉強した知識だけでは、実際の現場ではうまくいかない。結局のところ求める答えは本にはなくて、現場にある」と自身の経験から悟ったという。

B-EN-G上海ではこうした現場でしか得られない知識を遺していきたいと、一つの案件が終わると社内でノウハウを共有している。「今ではほとんどの業種で抱えているであろう悩みが分かる」と顧。現場が社員を育て、ノウハウは会社の財産となっている。

中国人にははっきりと

顧・袁
「なんでもお気軽にご相談ください!」(顧・袁)

最後に中国でプロジェクトを成功に導くポイントを二つ教えてくれた。一つは問題意識をクライアント社内で統一すること。総経理との会話だけで終わらせずに、「なぜこのシステムが必要なのか」を現場の担当者まで落とし込んで、理解を得た上で作業を進めることが大切だ。現場のモチベーションと理解が伴わない上からの指示に従うだけの作業では、システムの良さを発揮できず、最悪の場合担当者が辞めてしまうこともあるという。

もう一つは、中国人に伝える時ははっきりと言うこと。日本人は、AとBのうち「Bが良い」と考えていても、「Aで大丈夫(良い)?」と聞くことがある。そう聞かれると多くの中国人は『Aが良いのかな』と思ってしまうという。顧も「それなら『Bが良い』とはっきり言って欲しい」と笑う。こうした文化や表現方法の違いから誤解が生まれ、意識の共有を妨げてしまう。中国では極力曖昧な表現は避けた方が良い。

各地に海外拠点があるB-EN-Gでは、顧や袁のように日本とその国の文化の両方に精通している人材が揃っている。グローバルビジネスのギャップを彼ら、彼女らが埋めてくれる。

(取材協力:NNA/監修・共同通信デジタル)
※本インタビューは2019年9月現在の内容です。

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B-EN-G上海

2004年、上海駐在員事務所を開設し、2010年には発展形として畢恩吉商務信息系統工程(上海)有限公司が上海市内に設立された。中国に進出している日系製造業を中心に、生産管理や原価管理、IoTソリューション等の導入支援やコンサルティングを提供し、デジタル化支援を行っている。B-EN-G上海には約30人の中国人社員が在籍、日本語が堪能な社員が多い。

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