タイ人の心を開く 日本人マネジャーの心得3選

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日本本社からタイの現地法人に赴任したが、タイ人の社員が思い通りに動いてくれない、報告が上がってこない、納期を守らない――。こんな悩みを抱えている駐在員も多いのではないだろうか。しかし、実はタイ人の文化や価値観を理解できていないあなたにこそ原因があるかもしれない。B-EN-Gのグローバル会計パッケージ「mcframe GA」のタイ市場での拡販に協力する JAST ASIA PACIFIC社のパチャラニヨム・ギッサナーさんによれば、タイ人の気持ちに寄り添ったマネジメントが欠かせないという。日本のIT企業での就業経験もあり、日本人とタイ人の社員の橋渡し役を務めているプロジェクトリーダーのギッサナーさんに、タイ人を上手にマネジメントするために日本人マネジャーが知っておくべき「3つの心得」について解説してもらった。

①部下に友達感覚で接する

日本のビジネスマンにとっては基本中の基本ともいえる「報連相」(報告・連絡・相談)。上司が部下に質問しなくても、プロジェクトの進捗状況や課題点などが集まってくる優れた習慣だ。

しかし、この習慣はタイにはない。日本から初めてタイに赴任した駐在員は情報を把握することができず、きっとイライラしてしまうだろう。

私自身、日本の大学院を卒業後、日本のIT企業でシステムコンサルタントとして約3年間働いていただけに、帰国してタイの企業に就職した時はギャップを感じた。

日本では週報や月報といったレポートを提出するのが当たり前だったが、タイではそういったルールもあまりない。日本流のやり方で部下と接していても情報が上がってこず、プロジェクトで問題が起きても報告がないこともあった。タイ人は問題を報告することで上司の機嫌を損ねることを心配する。だから、非常に遠慮しがちで、自ら話しかけることがなかなかできないのだ。

背景にあるのは、タイ独特の「マイペンライ」の文化だ。「マイペンライ」とは日本語で「何でもない」「大丈夫」といった意味で、相手を気遣う優しさを込めて使われる言葉だ。

では、一体どうすればよいのだろうか。

例えば、ある顧客企業の日本人マネジャーは、タイ人の部下に対してフランクに接するよう心がけているという。お菓子を社員に配ったり、社員と一緒にお茶を飲みながら会話したりしているようだ。

私も7人の部下を抱えるが、社内に限らず、社外でも「飲みニケーション」で、部下に対して積極的に話しかけるようにしている。

それこそ、あたかも「大親友」であるかのごとく接するよう心掛けている。部下が落ち込んでいる様子を見かけたら、「今日は顔色が悪いね、彼氏と別れたの?」「何かあったの?」と、「すごく知りたい」様子で話しかける。少々の年齢差も気にしない。

athome-thaiタイではアットホームな雰囲気の職場が好まれる(写真はイメージ)

仕事を指示する時も同様だ。日本ではよほど深い関係でなければ、社内でプライベートの話をすることはないが、タイではそれだと窮屈な会社という印象を与えてしまう。まず世間話をしたうえで、仕事を頼むことを心がけている。

フェイスブックやインスタグラム、LINEでもすべての部下とつながっている。インスタグラムでは、自分が投稿した写真に関連するユーザーをタグ付けする機能があり、部下と食事をした時は、部下をタグ付けした写真を投稿するようにしている。写真が拡散されることで、「この会社は良い会社だな」と外部に好印象を与えることができるし、それによって部下のモチベーションアップにつなげることもできるからだ。

日本の忘年会・新年会にあたる「ニューイヤーパーティー」もタイ人にとって大切な行事だ。会社がホテルなどで豪華な食事を社員に振る舞い、プレゼントも用意する。今年はコロナ禍で多くの企業の業績は落ち込んでいるが、ある顧客企業の日本人マネジャーは「社員のモチベーションを下げてしまうから、絶対に中止するわけにはいかない」と話しているほどだ。

古いタイプの日本企業では部下から上司へ「上申」することが当然で、まして上司が部下に対して友達のように接することはないかもしれないが、タイでは逆。上司から部下へ近づいていく必要があるのだ。そうすることで、必要な情報もおのずと入りやすくなる。

こうした習慣がない日本人がタイへ赴任しても、それまでの習慣をいきなり変えることは難しいかもしれない。しかし、意識して取り組めば必ずタイ人はきっと心を開くはずだ。

➁価値観の違いを理解する

タイに初めて赴任した駐在員の場合、しばしば日本とは異なる価値観に戸惑うだろう。

よくある違いの一つが時間の感覚だ。日本では打ち合わせの時刻に遅れると叱責されるが、タイではむしろ「マイペンライ」と気遣わなければならない。日本のように定刻通りに電車が運行しているわけでもなく、「時間が絶対」ではないのだ。

もう一つありがちなギャップが、指示の仕方だ。日本の場合、上司が部下に対して「この仕事をやっておいて」と素っ気なく指示しても、部下は当然のように従う。

しかし、タイ人の場合、「そもそもやる必要がない仕事をどうしてやらなければならないのか」と疑問を感じ、モチベーションが下がってしまうことがある。

そうならないよう「どうしてこの仕事に取り組む必要があるのか」「どういったプロセスが必要なのか」「納期はいつまでなのか」などと、多少時間がかかっても丁寧に説明する必要がある。説明を十分に尽くせば、少々大変な仕事でも、タイ人は納得した上できちんと遂行してくれるだろう。

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タイでは新型コロナウイルスの感染拡大により、3月から非常事態宣言が全土で発令され、当社でも在宅勤務が続いた。それまで朝礼や日報といった習慣がなかったが、部下に緊急事態である旨を丁寧に説明した結果、気持ちよく受け入れてもらい、プロジェクトを無事に進めることができた。

また、日本でもよく言われることだが、直接的な指示を心がけたい。日本人は何かを質問された時に、「はい、いいえ」ではなく、何かとあいまいに答えがちだ。

「これをやったらいいでしょう」「やったらいいんじゃない」「こんな感じでお願いします」といった曖昧な指示の出し方も要注意だ。日本人同士でも暗黙の了解や阿吽の呼吸が通じない時代になってきている中で、日本と異なる文化を背景に持つタイ人が行間を読むのはとても無理な話だ。「こうしてください」と一つ一つ「明確」に伝えないとお互いが損をする結果になりかねない。

日本人と比べて文章を書きたがらないのもタイ人の特徴だ。部下は上司に対し、メールではなく口頭で確認することがもっぱらだ。メールを送る目的が「証跡」を残すことであれば、なおさらメールを送りたがらない。

社内に限らず、顧客企業にメールを送っても返信がないことが珍しくない。電話の方がよほどつながりやすい。

とにかく日本のように、部下は上司に従うのが当然、ルールに従うのが当然といったように命令ばかりしていると、タイ人の社員の心はあっという間に離れてしまう。タイは日本よりも転職がしやすい国だ。一企業で10年以上勤め続ける人はかなり珍しい。同じ仕事内容で給料が少しでも高い企業があるのなら、迷わず転職するのが一般的だ。

だから、雰囲気の悪い会社で我慢して働き続ける必要がないのだ。日本人マネジャーの配慮が足りない場合、社員が次々と離職してしまうおそれがある。

③社員にスケジュールを合わせる

タイでは残業しないのが当たり前だ。日本と比べて交通事情が悪く、電車やバスを乗り継いで1~2時間かけて出勤することが珍しくないという事情もある。

bus-thai軌道系の交通がまだまだ貧弱なバンコクでは、バスは市民の重要な足となっている(写真はイメージ)

朝食を自宅でとる余裕がなく、会社で食べる人も多い。始業時間を過ぎても食べている人もいるだろう。しかし、やはり叱責するのではなく、「マイペンライ」と穏便に済ませよう。

残業をしないということは、各社員の労働ペースも一定ということだ。あるプロジェクトの納期に間に合わないから残業して追い上げようとするのは、タイでは難しい。

だから、プロジェクトマネジャーは各社員の能力をきちんと見極め、スケジュールを組む必要がある。見極めが甘くて納期に遅れても、社員を叱責するのはタイ人からすると筋違いというものである。

スケジュールを管理するのは社員ではなく、あくまでマネジャーの仕事なのだ。スケジュールに「社員が合わせる」のではなく、「社員を合わせる」ことを意識したい。

以上、タイの事例を紹介したが、タイ以外の国に当てはまる点もあるかもしれない。この記事が少しでも日系企業の皆さまのグローバル展開に役立てば、これ以上の喜びはない。

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パチャラニヨム・ギッサナー(Kitsana Pracharasniyom)
ニックネームはソム。泰日工業大学・日本ビジネス学科を卒業後、千葉工業大学大学院へ留学。日系IT企業などを経て、2019年から現職。好きな日本食は炙りサーモンの寿司。趣味はマラソンで、「コロナ禍が収束したら東京マラソンに出場したい」。

JASTEC (Thailand) Co., Ltd. / JAST ASIA PACIFIC CO., LTD.
1992年にJASTEC (Thailand)を設立以来、システム開発および導入、運用上のトラブルサポートまで長期継続的なサービスに従事。2018年にJAST ASIA PACIFICをBOI(Board of Investment:タイ投資委員会)ステータスにて設立。日本文化を理解し日本語でのコミュニケーションを得意とする技術者を揃え、mcframe GA導入も多数手がける。ASEAN地域全体でのmcframeの展開を目指し、日本語、タイ語に加え、英語も駆使するコンサルタントを抱える。B-EN-Gの拠点がある地域での営業協力はもちろんのこと、JASTの拠点があるマレーシアでの営業サポート、インドでの導入サポートなど、ASEANおよびインドでの広範囲な協力関係を構築している。mcframe GAだけではなく、mcframe製品全般(生産/原価)に広く関わっていけるよう、コンサルタントの教育に注力している。

JASTEC (Thailand) Co., Ltd.のサイトはこちら

(監修・共同通信デジタル / 撮影・Yoko Sakamoto)

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B-EN-Gタイはタイ現地のローカル企業や団体と「共創」することで、日本本社から「自立」してビジネス展開できる体制をつくり、タイに根ざした企業としてお客様のものづくりを支援します。

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  1. タイで15年以上の支援実績
  2. タイ現地企業や団体との「共創」による現地に根ざしたビジネス体制
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