イベントレポート B-EN-Gタイ主催「B-EN-G (TH) DAY 2026」 AI時代の製造業に求められる、データを起点としたサプライチェーンとコスト管理

2026年9月25日、Toyo Business Engineering (Thailand) Co., Ltd.(B-EN-G Thailand/BTH)は、カールトンホテル バンコク スクムウィットにて、年次セミナー「B-EN-G (TH) DAY 2026」を開催しました。
今年のテーマは「Control Your Supply Chain, Control Your Profit」、コンセプトは「Building the Foundation for AI-Powered Manufacturing」です。
製造業を取り巻く環境が大きく変化する中、サプライチェーンの不確実性への対応、コストの構造的な把握、そしてAIを活用した意思決定支援をテーマに、製造業の経営・現場を知る講演者やお客様を迎え、具体的な事例を交えながら議論が行われました。
オープニング:「AI時代の製造業におけるERPとAIの役割」
登壇者:ビジネスエンジニアリング株式会社 取締役 入交 俊行
冒頭のセッションでは、AI時代における基盤システムと新技術の役割分担が提示されました。ERPは、正確なデータ、業務処理、内部統制を支える「企業活動の強固な基盤」であるのに対し、AIは蓄積されたデータや現場のノウハウを資産化し、必要な情報へのアクセス、分析、意思決定を加速させる役割を担います。将来的には、データの可視化にとどまらず、業務そのものを自律的に支援する「AIエージェント」へと進化していく展望が語られ、その中核プラットフォームとなる「mcframe Alchemist」の構想が紹介されました。
基調講演1:不確実性の時代に、サプライチェーンをどう守るか
登壇者:Thai Honda Co., Ltd. OPERATING EXECUTIVE SUPPLY CHAIN MANAGEMENT OPERATION 神蔵 稔氏
タイの製造現場を牽引するThai Hondaの神蔵氏からは、近年の激動期における生々しいサプライチェーンの危機対応の事例が共有されました。
半導体不足による製品仕様の変更、サプライヤーの火災による生産プロセスの緊急移管、国境閉鎖を受けた物流ルートの再編など、次々と発生する不足の事態。
これらを乗り越える鍵となったのは、「問題の早期察知」と「関係部門・外部パートナー企業を巻き込んだスピーディな連携と意思決定」でした。
今後は、部品調達から製品納入までのサプライチェーン全体を一元的に可視化し、最適な判断を支援する「コントロールタワー」の構築を目指すという展望が示されました。
基調講演2:AIは「分析する時間」ではなく「考え、動く時間」を生み出す
登壇者:NTT Data (Thailand) Co., Ltd. Fortience Consulting Division, Managing Director 岡部 修大氏
続いて登場した岡部氏は、組織の要である中間管理職が直面する「Missing Middle(本来担うべき本質的業務の欠落)」という課題に切り込みました。
日々のトラブル対応やデータの収集・レポート作成に追われ、戦略的な分析や計画、部下の育成に十分な時間を割けない現状に対し、AIを用いた構造化分析のデモンストレーションを実施いただきました。そこでは、売上・コスト・在庫の変動要因をAIが瞬時に整理する様子が示されました。
「重要なのは、AIに意思決定を任せることではなく、分析作業の負荷を削り、人間が結果を深く洞察し、議論を交わし、現場改善を実行するための時間を創出することである」というメッセージは、多くの参加者の共感を呼びました。
パネルディスカッション:製造現場が求める「信頼できるデータ」

[モデレーター] Mr. Kantatorn Wannawasu(Mediator Co., Ltd. / CEO)(一番右)
Mrs. Phawinee Petkrai(Ohashi Technica (Thailand) Co., Ltd. / Sr. Supervisor, Accounting Department)(右から2番目)
Mr. Nipit Phopittaya(Yano Electronics (Thailand) Ltd. / Deputy General Manager, Sales & Production Control Department)(左から2番目)
Mr. Suparerg Jindadoung(CMK Corporation (Thailand) Co., Ltd. / IT & GA Division Manager)(一番左)
パネルディスカッションでは、経理、営業・生産管理、ITという異なる視点から、現場におけるリアルなデータ運用の課題が議論されました。
原材料価格や為替、乱高下が続く中、、単に数値の変化を追うだけでなく、「なぜ変わったのか」「どの要因が影響しているのか」「その変化に対して何をすべきなのか」を深掘りすることの重要性が強調されました。そのためには、部門ごとにサイロ化した数字を見るのではなく、組織全体で「単一の信頼できるデータ」を共有し、認識を一致させることが不可欠です。
あわせて、AIを活用する際にも最終的な妥当性検証は人間が担うべきである点や、データ連携におけるセキュリティを確保することの重要性についても活発な意見が交わされました。
BTH講演1:「データ」から「行動」へ― mcframe Alchemistの活用
Toyo Business Engineering (Thailand) Co., Ltd. / Senior Consultant Pobthorn Kongsilp氏具体的な業務適用のステップとして、「mcframe Alchemist」用いた実務デモが披露されました。請求書とERPデータの自動照合、原材料価格と標準原価の差異分析、在庫データの異常検知、BOI対象原材料の管理など、タイの製造現場に即したユースケースを紹介。
さらに、Inventory Agentが不足品を検知し、Supplier Agentが調達条件を分析、Procurement Agentが発注案を作成するといった、複数のAIエージェントが連携する将来像についても提示されました。
目指すべきは全自動化することではなく、AIが論点を整理し、人間が確信をもって判断・行動するという「人とデジタルの適切な役割分担」であると考えを示しました。
BTH講演2:AI時代だからこそ、人と人とのコミュニケーションが重要になる
Toyo Business Engineering (Thailand) Co., Ltd. Managing Director 渡邉 祐一氏
最終セッションでは、「Speed& Communication」をテーマに掲げ、AI時代における組織論へと議論が深まりました。
AIによって個人の仕事のスピードが向上しても、既存の業務プロセスや意思決定の仕組みが変わらなければ、組織全体のスピードは向上しません。また、「早く納品したい営業」、「品質をしっかりと保証したい品質管理」、「リスクや条件を精査したい財務」のように、部門ごとに異なる判断基準を持っている場合、それぞれの「正解」を組織全体として調整し、より高い視点から意思決定する役割が、これまで以上に重要になります。
だからこそ、AI時代にはデータやシステムをつなぐだけでなく、目的を共有し合意形成を図るための「人と人との対話」こそが意思決定のボトルネックを解消します。AI時代の製造業をドライブさせる真のチカラは、「データ」「AI」「人」の三位一体の連携にあると締めくくりました。
今回の「B-EN-G (TH) DAY 2026」では、サプライチェーンの危機対応からコスト分析、AIエージェントの活用まで、さまざまな視点から製造業のこれからについて議論しました。そこで共通していたのは、AIそのものが目的ではないということです。信頼できるデータをつなぎ、AIによって必要な情報を迅速に分析し、人が状況を理解して意思決定し、関係者と連携して行動する。このサイクルを組織の中に構築することが、AI時代の製造業における競争力につながると私たちは考えています。
B-EN-G Thailandはこれからも、ERPやSCMを中心とした業務基盤とAIを組み合わせ、お客様のデータ活用と業務変革を支援してまいります。
最後に、本セミナーにご登壇いただいた講演者・パネリストの皆様、そしてご参加いただいたお客様・パートナーの皆様に、心より御礼申し上げます。

※本記事は2026年11月現在の内容です。