顧客に寄り添いIoTの次の扉へ B-EN-G上海IoT部長 徐熠帥

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中国の生産現場に押し寄せる自動化やデジタル化の波。政府が2015年に製造業の高度化政策「中国製造2025」を打ち出して以降、関心は高まる一方だ。だが、B-EN-G上海総経理のによれば、自動化に向けた工場内のデータ統合の基盤が整っていない企業がまだ多く、IoTの“入り口”となるソリューションが必要な段階だという。B-EN-G上海が考える“入り口”とは何なのか? IoT部長・徐熠帥が解説する。

信号灯で繋がる

B-EN-GのIoT関連ソリューションの中で主力となるのが、設備稼働状況の「見える化」や、モニタリングをサポートする「mcframe SIGNAL CHAIN」だ。

製品名の「シグナル」が示す通り、工場内の設備に設置された信号灯から送信される無線によって、機械の運転・停止情報を記録することができる。

「チョコ停」と呼ばれる設備の予期せぬ停止によるロスを把握し、生産性の改善に繋げることが目的。既設の信号灯に送信機を取り付けて、簡単なセットアップをするだけで翌日からモニタリングを開始できるという手軽さが売りで、中国国内ですでに十数社が利用している。

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mcframe SIGNAL CHAINのイメージ

中国語のほか、英語やタイ語、インドネシア語などの言語切り替えや、多言語対応の辞書機能も搭載しており、タイや、インドネシア、米国、メキシコ、フランスなど様々な国と地域で利用されている。「海外の中でもスマート化のニーズが高まる中国では、もっと導入を増やしていくことができます」。徐はこのように自信を見せる。

設備×人で評価制度に

SIGNAL CHAINが順調に導入実績を伸ばすなか、徐は顧客企業で作業員の評価に関する課題を耳にする。

その企業では、作業の達成度合いに応じてA B C Dのランクで作業員を評価していた。例えば、標準の作業時間に対して90%の水準で作業を完了している人はAランク、70%ならBランクという具合だ。

ところが、肝心の達成度合いの見極めが評価者の感覚値に依存しており、評価の精度に課題があった。

前職時代にメーカーの管理部長としてKPI制度の整備など人事総務系の業務経験がある徐は、SIGNAL CHAINが吸い上げる設備の稼働情報と「どの人が製造しているか」という作業員の情報を結びつけることで、評価の指標とする方法を思いつく。

まず、製造指図に従って設備ごとにタスクを割り当てる。設備の稼働開始時間と終了時間、合間の休憩時間をSIGNAL CHAINから自動で取得し、タスクの進捗状況を可視化する。そこに「その時に作業しているのは誰か」という作業者の情報を重ねれば、「製造計画より遅れているそのラインの担当者は誰か」「逆に計画通りに進んでいるこの部品の作業者は誰か」という形で、設備の進捗情報から作業員の評価を割り出すことができる。

これらを管理できる簡易的なシステムを作ったところ、「人事評価の質が向上した」と顧客企業から高く評価された。

「お客様の経営課題に寄り添う」

「中国のIT分野では日々新しいプレーヤーが生まれていて技術革新も著しい。そんな中で私たちが競争力を高めるには、システム導入だけで終わらせずにお客様の経営課題に寄り添うことが必要です」。徐は作業員評価システムが生まれた背景についてこのように語る。

この発想は徐ひとりに限ったことではない。

B-EN-G上海のメンバーは同じ意識を持っています。顧や袁も開発者でありながら、財務管理に強く経営者視点で考えることができる。自分の経験や強みとお客様の事業計画を照らし合わせて、それを実現するためにどんなシステムが必要かを考えるのがB-EN-Gの社員なんです」。

こうした発想が既存の製品にとらわれない新たなソリューションを生み出している。

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「どうやってお客様の経営を助けるか」という視点の重要性を強調する徐

データ統合プラットフォーム

徐は今、次の時代を見据えた新たなIoTソリューション構想を掲げている。

「今の中国の製造業は『見える化』のフェーズにあり、そこに対するソリューションとしてSIGNAL CHAINがあります。見える化が進むと工場内の様々な情報の中から必要な情報と不要な情報を判別し『価値ある情報』に変換することが求められます」。

設備、製造、実績、品質、人など色んな軸の情報がデータとして見える化されたとき、膨大なデータを集約できる統合プラットフォームが必要になると徐は考えている。

「『価値ある情報』が集まると次はその情報を基にAIを使って『予兆する』というフェーズに入ります」。来る次の時代にスムーズに移行するための、データ統合のプラットフォームをB-EN-G上海は準備している。

日本と中国のビジネスにおいて異なる点はいくつかあるが、製品のリリースに関しては「何度もテストを重ね100%完成してからリリースするのが日本式。多少荒削りでも使ってもらいながら改善していくのが中国式です」と徐。

「一概にどちらが良いとは言えないが、これまでの経験上、お客様とコミュニケーションを重ねながら作るものこそ、最良の製品になると確信している」と、統合プラットフォームのプロトタイプは早ければ2020年度の上期中にリリースする計画だ。“入り口”を開いたB-EN-G上海が“次の扉”を開ける日は近い。

(取材協力:NNA/監修・共同通信デジタル)
※本インタビューは2019年9月現在の内容です。

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B-EN-G上海

2004年、上海駐在員事務所を開設し、2010年には発展形として畢恩吉商務信息系統工程(上海)有限公司が上海市内に設立された。中国に進出している日系製造業を中心に、生産管理や原価管理、IoTソリューション等の導入支援やコンサルティングを提供し、デジタル化支援を行っている。B-EN-G上海には約30人の中国人社員が在籍、日本語が堪能な社員が多い。

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