コロナ禍入社の社員が聞いた、海外拠点ウィズコロナの実情[シンガポール編]

新型コロナウイルスの感染拡大が始まってから1年以上が経過しました。情勢回復が見られている国はあるものの、未だにどの企業も日々変わる状況により、対策に悩まされています。[セカイのチカラ]編集部の私、カミジョーもコロナ禍にB-EN-Gに入社。編集部の一員でありながら、現地を知る機会をなかなか作れずにいました。
そこで、「コロナ禍における海外拠点の実情」について、B-EN-Gの海外拠点である、アメリカ、インドネシア、シンガポール、タイ、中国の各駐在員に話を伺うことにしました。
このシリーズを通じて、海外拠点がある日本法人の方に少しでも現地の状況や業務遂行のヒントを提供したいと考えています。コロナ禍入社に入社した私、カミジョーがお伝えする海外拠点ウィズコロナの実情、今回はB-EN-Gシンガポール Managing Directorの山下元士さんに話を伺いました。
取材日:2021/07/14
各国のコロナ状況を聞いてみた

山下さん、初めまして!今日はよろしくお願いします。
ニュースなどでご存知の読者もいらっしゃるかもしれませんが、まずは改めて2021年7月14日現在の、シンガポールのコロナの状況を教えてください。
カミジョー
コロナ禍の2020年3月にビジネスエンジニアリング(以後「B-EN-G」)入社。
海外事情を学ぶために「セカイのチカラ」編集部員として、海外進出している日系企業の活躍や実態の発信に取り組んでいる。グリーンチキンカレーと四川麻婆豆腐が好き。

シンガポールは、2020年4~5月のサーキットブレーカー(部分的ロックダウン)以降、段階的に規制を緩和してきて、1日の感染者を数名に抑え込んでいたのですが、2021年4月末~5月上旬に感染者数が連日30~40名に急増して、5月中旬から6月中旬まで規制再強化となりました。その結果、感染者数は落ち着いてきており、再度、規制緩和が進められているところです。
山下 元士(やました もとし)
1999年 東洋エンジニアリング(TEC)に入社後、B-EN-Gに転籍。SAP ERP導入プロジェクトにてコンサルティングおよびプロジェクトマネジメントを担当。2009年よりシンガポールに駐在し、2015年よりシンガポールを含むASEAN4ヶ国にてmcframeのビジネスディベロップメントにも従事。

タイ(※コロナ禍入社の社員が聞いた、海外拠点ウィズコロナの実情[タイ編])やインドネシア(※コロナ禍入社の社員が聞いた、海外拠点ウィズコロナの実情[インドネシア編])は現在もロックダウン中と聞きましたが、シンガポールは比較的うまく対策しているのですね。
実際にはどのような対策を取られているのでしょうか?

シンガポールは、国境を閉じることで海外からの流入を防ぎ、国内では検査・追跡・隔離を徹底して行っています。また、日本でも同様な策が実施されていると思いますが、レストランの人数制限や時短営業、同居家族以外と会う際の人数制限、業務は在宅勤務を基本とする、などの対策が取られており、違反者には罰金等のペナルティが与えられています。
コロナウイルス感染対策における、フェーズごとの規制内容 ※当社調べ
サーキットブレーカー | フェーズ ① ~ ③ | フェーズ2 HA | (Heightened Alert) フェーズ3 HA | |
期間 | 2020/4/7~6/1 | ① 6/2~6/18 ② 6/19~12/27 ③ 12/28~5/15 |
2021/5/16~6/13 | 2021/6/14~ |
同居家族以外との接触・集会 | 不可 | ① 両親・祖父母のみ可 ② 可(5人まで) ③ 可(8人まで) |
可(2人まで) | 可(5人まで) |
在宅勤務 | デフォルト | デフォルト | デフォルト | デフォルト |
店内飲食 | 不可 | ① 不可 ② 可(5人まで) ③ 可(8人まで) |
不可 | 不可→可(2人まで:6/21~) |
買い物 | 生活必需品のみ | ① 生活必需品のみ ②③ 可 | 可 | 可 |
スポーツ | 1人でのウォーキング・ジョギングのみ | ① 1人でのウォーキング・ジョギングのみ | ①1~2人でのウォーキング・ジョギングのみ ② 可(5人まで) ③ 可(8人まで) |
1~5人でのウォーキング・ジョギングのみ→可(2人まで:6/21~) |
自宅外でのマスク着用 | 必須 | 必須 | 必須 | 必須 |

規制を守っていない企業やお店、マスクをしていない人を取り締まる仕事を作って失業者を雇用するなど、政府も様々な工夫をして対応しているように思います。
ワクチン接種は順調に進んでおり、2021年7月14日時点で1回目のワクチン接種率は全住民の70%を超えています。

失業者を別の形で雇用しているのは斬新ですね。ワクチン接種も日本より進んでいるようですね。
海外拠点のビジネスシーンはどう変わったか?

テレワークはもちろん浸透したはずですが、お客様とは対面の機会が減ったかと思います。
担当しているお客様との関係性はいかがでしょうか?

私が担当しているお客様はシンガポールのみではなくマレーシア、ベトナム、フィリピンにもいます。
そのため、コロナ以前は営業活動やパートナー様の支援、プロジェクトでは節目節目に現地に伺って支援していましたが、コロナ以降は自由に渡航できないため、出張なしで完全にリモートで対応するようになりました。

国をまたいでの業務支援はさらに厳しい状況のようですね。

そうですね。新規案件の開拓など、現地に行けないことで影響を受ける部分はあります。とはいえ、現地のパートナー様のご支援を頂き、プロジェクトは問題なく進行できています。
Web会議中心になった今では、より一層、話す機会を頂いた目の前のお客様、パートナー様の課題を深く理解する意識を大事にしています。

サポートする地域が広いからこそ、お客様、パートナー様と協力しあって業務が遂行できているのですね。シンガポールは“アジアのハブ”と言われていると思いますが(行ったことないので言葉だけ…)お客様がデジタルシフトをしている実感はいかがでしょうか?

やはり感染拡大当初はIT投資を控えめに考え、様子見していたのではないかと思います。一旦は国全体として景気が落ち込みましたが、ここ最近は持ち直してきて、お客様も動き出してきました。
仰るとおり、シンガポールはアジアの統括拠点として位置づけるお客様もいらっしゃるので、“拠点の見える化”を喫緊の課題と捉えている企業も少なくないですね。コロナ禍だからこそ取り組んでいる会社も多くなっています。

「拠点の見える化」。私も今実感している部分もありますが、国をまたいだ行き来が断絶されて、やりとりも減った状態で統括するのは至難の業と言えますね。
山下さんは複数国のお客様がいらっしゃいますが、特に重要だと感じた点はありますか?

パートナーシップの重要性を改めて感じています。
デジタル上ではコミュニケーションができたとしても、新たに一から信頼関係を築くのは時間がかかります。
コロナ以前は、お客様より悩みを相談された際には国をまたいで駆けつける場面もありましたが、今はそれができません。
そのため、マレーシア、ベトナム、フィリピンなどの各国のパートナー様に現地のお客様をしっかりサポートしていただき、私たちはメーカーの立場から後方支援しています。
パートナー様と良い関係性を築けていたからこそ、このウィズコロナの困難な状況にも一緒に立ち向かえていると感じています。
シンガポールにあるチャンギ空港ターミナル。厳格な旅行制限を行っている。

B-EN-Gも各国で多くのパートナー様と一緒に事業を推進していますが、強力なパートナー様がいるからこそ、お客様を支えることができ、B-EN-Gもビジネスを継続できているのだとわかりました。
本日はどうもありがとうございました。