グローバル22拠点の会計システムを mcframe GA に統合

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国際事業を強化しているセンコーグループホールディングスは、強みとするM&Aのノウハウを活かしながら海外事業を大きくしてきた。だが、そうした中で課題となったのが財務経理業務である。各拠点がバラバラの会計システムを利用したままでは、連結決算にも多大な時間と手間を費やしてしまう。そこでグローバル共通の会計システムとしてビジネスエンジニアリング(B-EN-G)のmcframe GAを導入。本社および各拠点の業務負荷軽減を実現するほか、経営の意思決定を支える管理会計の取り組みを強化し始めている。

迅速な連結決算と意思決定のためのデータ統合を実現

海外事業の拡大とともに浮上した経理・財務業務の課題

JPN_Ikeuchi
センコーグループホールディングス株式会社
常務理事 経営戦略本部 グループ管轄部長
池内 克年 氏

物流事業を中心に商事・貿易、ライフサポート(介護、フィットネス、食など)、ビジネスサポートなど、多様な事業を展開しているセンコーグループ。積極的なM&Aを推進しているのが特徴であり、現在傘下のグループ会社の総数は176社(2023年10月現在、非連結も含む)に拡大。2023年3月期における総営業収益は約7000億円に達している。

センコーグループは「Moving Global 物流を超える、世界を動かす、ビジネスを変える」のスローガンのもと、グローバルでの事業拡充や、フォワーディング、貿易事業の伸長を中心に海外事業を大きくしてきた。同社 常務理事 経営戦略本部 グループ管轄部長の池内克年氏(以下、池内)は、「当初は海外展開を進める日系企業の物流をサポートする形で国際事業に乗り出しましたが、現在は日系企業以外の荷主の需要や商事・貿易などのビジネスも拡大させていこうとしています」と語る。

強みとするM&Aのノウハウを活かしながら、現地の物流会社などを傘下に加えて商圏を拡大していくというのが同社の基本戦略だ。とはいえそこにも課題はある。どんどん増えていく海外子会社はもともと日本とは異なる文化をもつ現地企業であり、日本本社側を含めて各拠点のデータを統合した経営管理基盤の整備がなかなか追い付かない状況にあった。「例えば連結決算のための財務会計データを各拠点から収集しなければなりませんが、当然のことながら現地語でしか記述されておらず、勘定科目も異なり、情報の精度にもバラツキがありました」(池内)

同社では、海外の各拠点から集めた財務諸表や決算書を日本の書式にマッピングする作業をグループ会社のセンコービジネスサポートに委託し、その上で連結決算を行っていた。しかし、このプロセスはほとんど手作業であり、多大な時間とコストを要してしまっていたのだ。ましてや管理会計で必要となる仕訳データなどの粒度の細かい計数情報の入手はより困難であり、各拠点の経営状況をタイムリーに把握することができなかった。

子会社のデータを効率的に収集できる機能に着目してmcframe GAを選定

JPN_Hamaguchi
センコーグループホールディングス株式会社
経営戦略本部 グループ管轄部
財務システム企画担当部長
濱口 三佐夫 氏

この課題を解決すべく同社は、2019年頃からグローバルな経営基盤となる会計業務のルールとオペレーションの整備、経理人材面の手当など、段階的に対策を進めてきた。そして、その最終ステップとして検討を開始したのがグローバル共通の会計システムの導入である。

2020年12月、会計系コンサルタントから海外導入経験が豊富なITベンダーとして紹介された9社に対してRFP(提案依頼書)を配布。応募のあったパッケージの中から総合評価を経て、mcframe GAを選定した。

「グローバル共通の会計システムに加え、各海外子会社が独自に利用している会計システムからデータを一元的に収集する『Global Link』という機能を備えていたことも大きかったです。これがあれば現地の文化や主体性を尊重しつつ、仕訳データや資金データなど詳細な計数情報を本社から直接取得し、管理会計に生かすという柔軟な対応が実現できます。標準会計システム導入と合わせ、現地の会計システムからデータを収集する仕組みの両方を提案したのはB-EN-G一社でした。加えて当社の拠点が多く点在するタイならびに中国における導入実績の多さ、導入支援体制の信頼性も選定に至った大きな要因でした」(池内)

こうしてmcframe GAを導入した同社は、2021年4月より効率的な連結決算の業務プロ セスを実現できる本社機能の開発に着手した。同社 経営戦略本部 グループ管轄部 財務システム企画担当部長の濱口三佐夫氏(以下、濱口)は、「コロナ禍で対面の機会が限られる困難な時期ではありましたが、B-EN-Gのコンサルタントは公式の会議体のみならず、インフォーマルなコミュニケーションも通じて親身なサポートを提供し、開発プロジェクトを円滑に進めてくれました。あわせて的確なスキルトランスファーを実施してくれたおかげで、mcframe GAの今後のメンテナンスや追加開発にも、ある程度内製できる技術力を習得することができました」と、B-EN-Gの貢献を高く評価している。

タイと中国でのパイロット導入を経て全拠点展開

上記の本社機能開発と並行する形で、2022年2月末までかけて進めてきたのが海外子会社に対するmcframe GAのパイロット導入である。最初の拠点に選んだのは、タイのバンコクにあるSENKO(THAILAND)だ。

「最初は小規模な拠点から着実に成功事例を作っていくという考え方もありましたが、あえてASEAN地域における国際物流事業の中核拠点であるタイから始めることにしました。実際に多くのビジネスを手がけている拠点で実績を作ってこそ、その後の本格的なグローバル展開で役立つノウハウを蓄積できると考えました」(池内)

続く2つ目の拠点に選ばれたのが、中国広州市にある広州扇拡物流有限公司だ。「こちらの拠点の特徴は、弊社の海外子会社の中でも歴史が古く、すでに大量のデータが蓄積されていることです。また、まずこの広州で実績ができれば、中国全域に広がる他の拠点においてもmcframe GAを使ってみようという雰囲気がおのずと醸成されるという狙いがありました」(池内)

こうして2つの拠点でのパイロット導入を成功させた同社は、その経験を活かすことで当初導入計画先の全22拠点への展開を2023年5月末までに完了することができた。この効果はさまざまな形であらわれている。

「これまでセンコービジネスサポートに委託していた、海外子会社から集めた決算書のデータ変換・マッピング作業はほぼなくなり、連結決算書作成のために経理部門の担当者が費やす工数も5分の1程度に削減されています」(濱口)

そしてmcframe GAは、国際物流事業のあり方そのものを大きく変革しつつある。「一部の海外拠点では経営管理報告の自動作成を実現し、作業負荷の軽減と迅速な経営判断の 一助となっています。また本社を含めて標準会計システムを理解する関係者が増えたことにより、業務オペレーションにトラブルが発生した際にも柔軟な対応が可能となりました」(池内)こうした成果を足場としながら、同社は経営層における意思決定のスピードアップと経理・財務に関する現場業務の効率化の双方に貢献するmcframe GAのさらなる活用を進めていく意向である。

【中国拠点】中国12拠点の会計情報を集約して日本本社につないでいた業務負荷を軽減

センコーグループホールディングスでは中国に12の拠点(連結ベース)を構えている。各拠点の財務経理情報を集約して日本本社へ送る役割を担っているのが、上海に拠点を構える上海事務所だ。mcframe GA導入の効果を現地メンバーに聞いた。

中国国内12拠点で3種類の会計システムが混在

Cho_Ri
(左)センコーグループホールディングス株式会社
経営戦略本部 グループ管轄部 東アジア担当部長
張 オウ 氏
(右)センコーグループホールディングス株式会社
上海事務所 マネジャー
李 曉燕 氏

- mcframe GA導入以前、中国の現地法人ではどのような形で財務経理業務が行われていたのでしょうか。

 計12社の現地法人で3種類の会計システムが使われていました。いずれも中国ではスタンダードなものですが、オンプレミスのサーバーで運用しているアプリケーションだったため、財務経理に関するすべての業務をオフィスで行っていました。上海事務所は、これら中国国内すべての拠点の財務経理業務を統括管理する役割を担っていることから、各拠点の情報をいったん集約してとりまとめてから日本の本社に送るというプロセスを踏んでいました。

- 会計情報のとりまとめには実際にどのような苦労があったのでしょうか。

 3種類の会計システムはシステムごとにそれぞれ操作方法が異なり、加えて拠点ごとの設定にも違いがあります。このため日本の本社サイドから、例えば「拠点ごとに荷主別の売上高を出してほしい」といったリクエストを受けたとしても、即座に対応できない場合もありました。さらに各拠点から寄せられる会計情報の詳細確認も簡単には行えませんでした。本社サイドから受けた問い合わせの意味を上海事務所の担当者が理解した上で、中国内の各拠点の担当者に問い合わせるといった人間系のやりとりによって確認が行われていました。各拠点ですでにまとめられた損益計算書(PL)と貸借対照表(BS)のデータしか把握できなかったのが、これまでの実情です。

日本本社からの確認依頼の8~9割は上海事務所で対応可能に

Rin_San
(左)上海扇拡国際貨運有限公司
総経理
林 亞博 氏
(右)上海扇拡国際貨運有限公司
財務経理担当
蔡 莉花 氏

- mcframe GAが導入されたことで、この課題はどのように解決されましたか。

 中国国内すべての拠点の会計システムが統一されたことで、財務経理業務のオペレーションも標準化されました。会計データに関して日本本社から何らかの詳細確認の依頼を受けた場合も、各拠点に問い合わせを行う必要はなくなり、8~9割は上海事務所で対応できるようになりました。そもそも日本本社はmcframe GAから各拠点の詳細情報を直接アクセスできるため、問い合わせそのものが減っています。

- 結果として、どのような業務改善の効果があらわれていますか。

 日本本社と各拠点間のやりとりを仲介することが多く、従来は四半期あたり1~2週間の時間を取られていました。あくまでの私の肌感覚ですが、mcframe GAの導入によってこの時間は半分以下に短縮されています。そのぶん上海事務所の財務経理担当者は、本来の業務に専念できるようになりました。

 システムがクラウド化したので場所を問わずに使えることがメリットです。また、現在は拠点で使用している他の業務システムと会計システムが自動連携しているので、データ入力の手間が不要になり、入力のミス低減によるデータの正確性向上にもつながりました。細かい機能面では、新たな伝票作成にて過去の情報をコピーして流用しやすい点は便利だと感じています。

 上海の3つの現地法人および香港の計4拠点の総経理を務めている私からみても、mcframe GAの導入によって非常に大きな効果が出ていると思います。どこにいても4拠点の会計情報を確認できるようになったほか、統一的な視点で調べることができるため、意思決定のスピードが大きく向上しています。

 mcframe GA導入に伴い中国拠点では勘定科目を統一し、データの一元化も実現できました。次のステップとしては、統合されたデータを活かして、さまざまな切り口で収支やコストなどを分析しながら、中国拠点内での経営管理機能も使いこなしていきたいと考えています。

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【タイ拠点】月締め処理に費やしていた時間を従来の15日から5日へと大幅に短縮

ASEAN地域における国際物流事業の中核拠点であるタイ。3つの現地法人では、それぞれ異なる会計システムが導入されていたが、機能が不十分で財務経理業務の担当者は不満を募らせていた。導入対象となった2社においてmcframe GAがこの課題を解決し、業務効率を向上させている。

効率化によって余裕のできた時間で収益に直結する業務に専念

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(左)Affiliates Management
Department Strategic Planning 
HQs General Manager 藤崎 孝浩 氏
(右)Regional Office
SENKO LOGISTICS DISTRIBUTION (THAILAND)担当
Jiraporn (Tan)氏

- mcframe GA導入前のタイ拠点における財務経理業務はどのような状況でしたか。

Tan タイには国際物流事業のほか、自動車運送・倉庫業務、トレーディング業務を担う3つの現地法人があり、それぞれ異なるオンプレミスの会計システムが使われていました。
ただ、いずれのシステムも使い勝手があまり良くなく、財務経理の現場では不満を抱えていました。例えば月締めの作業が予定どおりに終わらない、周辺システムとのデータ連携でエラーが発生するといった問題が頻繁に生じていました。

- そうした課題はmcframe GAの導入によって、どのように改善されましたか。

Tan mcframe GAの導入によって会計システムの機能は大きくレベルアップし、使い勝手も良くなりました。結果として問題だった月締めの処理は従来の15日から5日へと大幅に短縮できました。実のところ月締めの処理に15日も要していたのでは、とりまとめた財務データは鮮度を失ってしまい管理会計に生かすことはできません。その意味でmcframe GAはタイ拠点における業務効率化を実現するとともに、東京本社を含めた経営の意思決定のスピードアップに大きく貢献しています。細かい機能面では、債権と債務をシステム内で相殺する機能が実装されている点も高く評価しています。従来の会計システムは一般会計の機能しかなかったため、この処理を行うためには手作業による入力の必要がありましたが、mcframe GAではそうした作業は不要となり、とても便利になりました。これによって余裕のできた時間は、たとえば税金の還付申請の徹底した確認など、会社の収益に直結する業務に振り向けています。

クラウド化によって3拠点間の連携を強化

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(左)Regional Office General Manager
Jiraporn(Ked) 氏
(右)Regional Office SENKO(THAILAND)担当
Natenapha(Nate)氏

- mcframe GAでクラウド化されたことによるメリットはありましたか。

Tan クラウド化の効果も非常に大きいです。タイの3つの現地法人のうち2つの拠点は首都バンコクにありますが、もう1つの拠点は少し離れたチョンブリー県にあります。会計システムのクラウド化によって、この3拠点の財務経理部門間のコミュニケーションや連携が大幅にスピードアップしました。クラウド化のもう1つのメリットはリモートワークへの対応です。タイでもコロナ禍の非常事態宣言の発令に伴いロックダウンが行われましたが、タイミングよくmcframe GAが導入されたおかげで、在宅からも無事に財務経理業務にあたることができました。

- 今後に向けてタイ拠点では、財務経理業務をさらにどのように改善したいとお考えでしょうか。

藤崎 Tanの話にもあったようにmcframe GAの導入はコロナ禍とも重なる中、タイ固有の会計税務への対応を進めてきたのですが、B-EN-Gのサポートもあってスムーズな定着化を図ることができました。現状では、日本本社の連結決算を支える会計システムにとどまっているという感も否めませんので、今後は、タイ拠点自身の経営のスピードアップにも資する管理会計の基盤としてもmcframe GAの活用を進めていきたいと考えています。これからが私たちの腕の見せ所であり、積極的にチャレンジしていきます。

THAI_Group

導入企業概要

商号 センコーグループホールディングス株式会社
創業 1946(昭和21)年7月
資本金 284.8億円
従業員数 23,727名
事業内容 物流事業、商事事業、ライフサポート事業、ビジネスサポート事業、プロダクト事業

企業ウェブサイト

 

導入製品

mcframe GA

  • 本事例は2023年8月現在の内容です。
  • 本事例中に記載の肩書きや数値、固有名詞等は掲載当時のものであり、変更されている可能性があります。
  • 掲載企業様への直接のご連絡はご容赦ください。
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