部下も息子も育てる 頼れるママさん管理職
日本に比べて女性の社会進出が進んでいるといわれるタイ。B-EN-Gタイでも管理職8人のうち3人が女性だ。そのうちの一人であるSirinapa Yamunee(ニックネーム:トゥック)(34)は2019年に長男を出産後、わずか2カ月で職場復帰。育児に奮闘しながら、B-EN-Gのグローバル会計パッケージ「mcframe GA」の導入サポートや、アフターフォローを行う部門のマネジャーとして多忙な日々を送っている。
家事も仕事もモーレツ
トゥックの朝は慌ただしい。午前5時過ぎに起床。生後11か月の長男のミルクの準備などを急いで済ませると、夫とともに6時過ぎには家を出る。車で20分離れた場所に住む母に長男を預けた後、バスと電車を乗り継いで8時頃に出勤する。
出勤後は、顧客の相談対応や7人いる部下の指導で息つく暇もない。以前は午後8時過ぎまで残業することも珍しくなかったが、「出産を経験し、意識が変わった」という。
できる限り仕事を効率的にこなすようにし、定時の午後5時に退勤。夕食が終わった後は、長男を遊ばせながら洗濯や掃除を同時にこなす。買い物はオンラインショップを利用し、週末は食事を作り置きして冷凍するなど「時短術」を駆使する。
午後9時過ぎ、長男を寝かしつけた後に仕事をすることもある。自分の時間はほとんどゼロだ。だが、「自分にそっくり」という長男を眺めていると、「可愛くて仕方がない。疲れも吹き飛ぶ」と笑顔を見せる。
働きながらMBA取得
商社やメーカーの経理スタッフとして働きながら大学院に通い、MBA(経営学修士号)を取得、2011年、B-EN-Gタイにmcframe GA(当時はA.S.I.A.)の顧客サポートを行うコンサルタントとして入社した。経理の仕事は「ルーチンワーク」だったが、コンサルタントは「これまでの知識を生かせる上に業務の幅も広く、挑戦し甲斐がある」と感じたという。
入社直後はmcframe GAのシステムを理解するのには苦労した。テスト環境で勉強しつつ、顧客企業にシステムを導入していく中で徐々に理解を深めていった。
顧客との丁寧なコミュニケーションも経理スタッフ時代にはなかった経験だ。システム運用に関して様々な相談が寄せられるが、迅速な解決には原因を見抜く力が必要だ。「顧客の話にじっくりと耳を傾け、問題の背景を聞き出すことが何より大事」という。
2017年にマネジャー昇格。部下に対しては的確なフィードバックを心がける。たとえ部下が仕事で失敗しても、「こうしたら良いよ」と協力的なスタンスで語りかけるなど、コミュニケーションに工夫を凝らす。
そんなトゥックを上司である二渡壮一と谷澤雅人は「顧客に柔らかい物腰で応対し、どんな要望でも何とかして実現する方法を常に考えている」と評価。経験が浅い部下の勉強のため、ビジネスセミナーに一緒に参加するなど面倒見の良さも持ち合わせているという。
コロナ危機克服「部下に感謝」
タイでは新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、3月26日から全土に非常事態宣言が出された。B-EN-Gタイでも5月末までの約2カ月にわたって在宅勤務が続いたが、「部下が懸命に働いてくれたおかげで業務がうまく回った」と、トゥックは感謝の言葉を口にする。
ソーシャルディスタンスを促すBTS(高架鉄道)の座席(2020年5月撮影)
今後はマネジャーとしてさらに経験を積み、部下の育成に努めていく考えだ。部下7人のうち6人が未婚の女性。彼女らが結婚し、子どもができた時には、時間管理の方法など自分の経験を伝えるつもりだ。「部下も息子もしっかり育てられる管理職でありたい」と意気込む。
会計の知識がなくても使える
付加価値税や源泉徴収税など日本とは様々な点で異なるタイの会計ルール。B-EN-Gのグローバル会計パッケージ「mcframe GA」の強みについてトゥックに聞いた。
――mcframe GAとタイのローカルパッケージとの違いは。
「mcframe GAはローカルパッケージと同様に、タイ国内の会計ルールに対応していることはもちろんですが、グローバル向けのパッケージなので様々な言語に対応しています。会計の知識がなくてもある程度使いこなせるというメリットもあります。タイのローカルパッケージにはあまりない強みだと言えます」
「サポート体制が充実していることも売りの一つですね。顧客から寄せられた相談に対し、基本的には24時間以内に対応することを心がけています。特に日系企業の顧客に対しては、日本語もタイ語も理解できる日本人社員がいるということが強みになっています。顧客企業がシステムを導入する際には、タイ人の社員に日本人の社員が同行します。タイ国内でそういったことができる会社はすごく少ないと感じています」
B-EN-Gタイ・ソリューション1部のメンバー。
仲間に囲まれ笑顔のトゥック(前列中央)と上司の二渡(後列左から1番目)、谷澤(同5番目)
――日系企業の駐在員がタイに来て困りがちなことはありますか。
「タイ人と同じ目線に立てない駐在員の方はうまくいかないことが多いように思います。日本流のやり方を押し付けられ、困ってしまうタイ人も少なくありません。ビジネスは日本人だけではできません。タイ人と日本人が共通の思いで一緒に働く、という意識が大切なのではないでしょうか」
(文・共同通信デジタル 須藤祐介 / 撮影・Yoko Sakamoto)
※本インタビューは2020年6月現在の内容です。