コロナ禍入社の社員が聞いた、海外拠点ウィズコロナの実情[アメリカ編]
新型コロナウイルスの感染拡大が始まってから1年以上が経過しました。情勢回復が見られている国はあるものの、未だにどの企業も日々変わる状況により、対策に悩まされています。[セカイのチカラ]編集部の私、カミジョーもコロナ禍でB-EN-Gに入社。編集部の一員でありながら、現地を知る機会をなかなか作れずにいました。
そこで、「コロナ禍における海外拠点の実情」について、B-EN-Gの海外拠点である、アメリカ、インドネシア、シンガポール、タイ、中国の各駐在員に話を伺うことにしました。
このシリーズを通じて、海外拠点がある日本法人の方に少しでも現地の状況や業務遂行のヒントを提供したいと考えています。コロナ禍入社の社員である私、カミジョーがお伝えする海外拠点ウィズコロナの実情、今回はB-EN-Gアメリカ 社長の館岡浩志さんに話を伺いました。
取材日:2021/08/27
各国のコロナ状況を聞いてみた
初めまして!今日はよろしくお願いします。 ニュースなどでご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、まずは改めて2021年8月27日現在、アメリカのコロナの状況を教えてください。
カミジョー
コロナ禍の2020年3月にビジネスエンジニアリング(以後「B-EN-G」)入社。
海外事情を学ぶために「セカイのチカラ」編集部員として、海外進出している日系企業の活躍や実態の発信に取り組んでいる。グリーンチキンカレーと四川麻婆豆腐が好き。
アメリカではコロナワクチン接種が進み、新規感染者が減少、2021年6月に弊社拠点のあるイリノイ州では営業活動の制限がない「フェーズ5」となりました。ワクチン接種者はマスクを着けなくてもよくなり、他州との移動制限も緩和されました。
しかし、最近はワクチン未接種者や未成年者を中心に、デルタ株によるコロナウイルス感染が急速に拡大し、新規感染者数が昨年秋のピーク時のレベルに戻っています。
CDC(アメリカ疾病対策センター)は、ワクチンを接種後も屋内ではマスクを着用するように指針を出すなど、状況は再度緊迫してきています。
館岡 浩志(たておか こうじ)
B-EN-Gアメリカ 社長 館岡浩志
ミシガン州立大学卒。B-EN-Gでは中国拠点駐在を経てグローパルERP「mcframe GA」の初代プロダクトマネージャーとして製品をリリース。プロジェクトマネージャーとしても3年間で12社のグローバルプロジェクトを実施。製造業向けIoTソリューションの新商品企画を担当後、2018年より北米地域のお客様をITの力で支援すべく、米国拠点の設立とともにシカゴに駐在中。
日に日に状況が変化しているようですね。街の雰囲気、国の対策はどんな状況でしょうか?
コロナウイルス感染は拡がっていますが、ワクチンを接種して一旦マスクを外した人達が、また着ける習慣を持つようになるのは時間がかかりそうです。飲食店なども通常営業に戻りましたので、再度規制されるとなると強い反発が予想されます。
このような状況をうけて、ニューヨークではレストランや商店など屋内に入るときはワクチン接種証明書提示の義務化、イリノイ州では学校に通う生徒・職員はワクチン接種が義務化されるなど、社会生活の中でワクチン接種が義務化されつつあります。
多くの企業が9月1日をオフィス再開の目途としていましたが、そのうち6割程度の会社が10月中旬または2022年までオフィス再開を延期としたと報道されています。
アフターコロナが見えてきたと思った最中に状況悪化。非常に苦しい状況ですね。
2021年6月に見かけた「ワクチン接種者はマスク着用が任意」の看板
海外拠点のビジネスシーンはどう変わったか?
ビジネスシーンでの影響はいかがでしょうか?お客様とのやりとりに変化はありますか??
アメリカは国土が広いため、コロナウイルス流行以前からWeb会議での打合せが多かったです。訪問には車で6時間ほどかかるお客様も多いので、お客様のオフィスに頻繁に出向くのは現実的ではありません。今回のコロナ禍で訪問できる比較的近距離のお客様もほぼWeb会議となりました。
また、アメリカは日本とは違って解雇が容易です。この1年経済状況も悪化して労働参加率は史上最低水準とも報じているメディアもあります。お客様の現地担当者が辞められてしまったり、日本人駐在員も帰国されたりしてしまっています。
解雇の容易さについて話は聞くことがありましたが、非常に怖いことですね。
そうですね。ただ今回のコロナ禍では手厚い失業給付金が支給されたこともあり、現在は未曽有の人手不足となりつつあります。特に製造業では、転職を前提とした長年の人材戦略から大きく転換し、長期的に在籍してもらう「人材を育てる」ことを考える企業が増えてきたと感じています。
コロナを機に競争力強化を目的としてDX推進に舵切りした企業も多く、アメリカの製造業も構造改革が進んだことは間違いないです。アメリカは製造拠点を海外に持っている企業が多く、「国内回帰」を考えなければいけなくなった今、アメリカ国内での製造力を高めるために自社の業務や強みに適したDXの計画を立てて遂行する必要が出てきています。
『「DX人材=IT専門家」は大誤解』の記事でも拝見しました。やはり自社の状況を把握できていることが変革を考えるためのベースとなるのですね。
具体的に実感した出来事はありますか?
直近で2つありました。
1つは製品活用の教育。製品は「導入して終わり」ではなく、自社に適した形で使いこなすことが重要です。
紙に記入していた業務をタブレット入力でデジタル化するソリューションを提供しているのですが、社員への定着に向けた手厚い教育研修の要望が増えてきました。 2つ目に内製化。製造機器の稼働監視ができるIoTソリューションを導入されたお客様が、別の製造ラインへ拡張することになりました。その際、自分達でIoTデバイスを取り付けて設定、検証するということもありました。
IoT自体が製造業に定着してきたこともありますが、「自分達で考えて現場改善をすべき」という考えから出てきた発想かもしれません。
コロナウイルス感染拡大で少しずつ新しい側面も見えてきたように感じますが、ニューノーマルに向けて他に話題になっていることはありますか?
2つのWが重要視されてきています。
1つ目のWはWorker(ヒト)。ここは今までお話した内容です。
2つ目のWはWeather(天気)、気候や環境問題です。
バイデン大統領が推進している2兆ドル規模の大型雇用創出・公共投資計画「アメリカン・ジョブズ・プラン(American Jobs Plan)」でも、気候変動対策やクリーンエネルギーは重要な要素となっています。
アリゾナ州にある乾いた大地。ひとたび雨が降ると川となり洪水になることもある。
SDGsを筆頭に、世界各国では環境を考慮した活動や投資計画が実際に支持されているようですね。
公共投資とは具体的にどのような種類が含まれるのでしょうか?
交通インフラ、インターネット、電力、水など様々ですが、やはり注目すべきはEV(電気自動車)ですね。
ここ数年の外部環境で、グローバルサプライチェーンの中でも製造拠点の偏りがあることがより顕著に現れているカテゴリです。
製造業が再度、国力の指標となりつつある今、アメリカも自国の製造業を再強化しようという潮流にあります。日系製造業企業もその波に乗って強くなっていく必要がありますね。弊社アメリカ拠点もITとDXという面でご支援できるよう注力していきます。
コロナウイルス感染拡大からアメリカ製造業の構造に変化が生まれてきたことがよくわかりました。
本日はどうもありがとうございました。