「アジアの現場」を見える化 飛躍するシンガポールのビジネス日系企業のアジア拠点を支える
「現地日本人の困りごと」にヒント
ビジネスエンジニアリング(B-EN-G)のシンガポール法人は、東南アジア諸国連合(ASEAN)各国に拠点を構える日系企業各社に、生産・原価管理システム「mcframe」や会計システム「mcframe GA」のほか、IoT(モノのインターネット)ソリューションなどを展開する役割を担う。ここシンガポール法人でManaging Director(現地法人社長)として奮闘するのが、山下元士だ。シンガポール駐在は2009年から10年にもなる。
山下はB-EN-Gの日本本社勤務時代、外資系大手ERPの海外複数拠点導入案件などを主に担当するプロジェクトマネージャーだった。シンガポールでも2014年までの5年間は、ある日系製造業でのグローバルERP導入をサポートした。現在の主な業務である「mcframe」などの自社製品を中心としたソリューション紹介の際には、単に製品にフォーカスするのではなく、「まず現地法人の日本人が何に困っているのかを考え、聞いている」という。
「シンガポールがASEANの統括拠点として、効率良く各国の情報収集ができていない」「各国のプロジェクトの状況がほとんど見えてこない」「現地スタッフ個人に頼った属人的な作業を標準化して、突然の担当者の退職などに対応したい」……現地の日本人が悩んでいる問題の要因をさぐっていると、システム的に解決できることも少なくないと指摘する。長年のERP導入コンサルタントとしての豊富な経験がここで活きる。
「ASEANの現場の見える化」で見えるもの
B-EN-Gはシンガポールで、日系企業の統括拠点向けにセミナーを定期的に開いている。ASEANの統括拠点としての顧客企業の活動をシステム面からサポートしていくのが狙いだ。このセミナーで出会ったのは、ある日系企業の経理マネージャ―だった。同社は数年前からシンガポールにASEANの統括拠点を設けていたが、「各国現地法人の経理システムがばらばらで、現場で進むプロジェクトの個別の採算性がほとんど見えない」と相談を受けた。そこで山下は、「mcframe GA」の導入を提案した。外資系大手ベンダーの高機能なERPだと導入コストも割高になってしまうが、グローバル経営管理ソリューション「mcframe GA」ならコストパフォーマンスが圧倒的に優れている。何よりも、この日系企業のようなプロジェクト型ビジネスのコスト管理にも最適なシステムだ。
この日系企業のシンガポール統括拠点では、毎月、各国からエクセルで送られる財務資料をまとめるなど手間がかかっていたが、マルチサイトでの導入によって一元的に管理できるようにした。グローバルマネジメントに必要な機能がコンパクトに実装されているmcframe GAを見た途端、悩んでいた日系企業の担当者は「これで無理なく統括管理機能を強化できる」とmcframe GA導入を決断したという。この顧客の5拠点導入プロジェクトは順次稼働、そのプロジェクトの全体の管理を指揮したのは山下で、顧客から信頼も厚い。
「日系企業のASEAN各国の現場を『見える化』し、作業を効率化することで、現場で何が起こっているのか、どんなリスクがあるのかを具体的に知り、管理できるようになる。リスクが減れば、ビジネスの拡大や新たな展開にも踏み出せる。顧客企業のアジアビジネスを持続的に成長させるための基盤づくりをサポートしている」と山下。
「ゴールのない挑戦の醍醐味」
シンガポールから日系企業のASEANビジネスの可能性を広げていく。それをITシステムでサポートしていくのがB-EN-Gシンガポール法人の役割だ。現時点でのカバーする地域は、シンガポールと隣国のマレーシアのほか、ベトナムとフィリピンの4カ国。
B-EN-Gシンガポール法人だけでこの広範な4カ国にきめ細やかに対応するのは難しいため、近年は各国でパートナー企業と協業し、現地で新たなビジネスを開拓していく体制を整えつつある。ベトナムでの導入を手掛ける日系パートナー企業は、ミャンマー、インドなどからも引き合いを受けるようになっている。
「パートナー企業経由でフィリピンやマレーシアでの引き合いが増えてきた。受注を増やし、次は日系企業の進出が活発なベトナムにも力を入れていきたい」。山下は1999年の入社以降15年間、ERP導入コンサルタント・プロジェクトマネージャーとしてプロジェクトの遂行を専門としてきたが、シンガポールでは思いかけずこれまで経験のない営業・マーケティングの業務にも取り組むことになった。「日系企業のシンガポール法人はASEAN統括拠点として各国の現地法人や日本本社と密なコミュニケーションを取り、調整する側面がある。その一方、シンガポール一カ国の現地法人としての側面もあり、拠点としての立ち位置は多彩だ」と指摘する。縦割り組織化してASEAN内で拠点どうしの連携が薄れた時、各国拠点と日本本社との間に入ってビジネスの方向性のまとめ役ができるのも、各国に自社拠点とパートナー拠点があるB-EN-Gならではだろう。
「プロジェクトには決められたゴールがあり、いかにリスクを減らして進めていくかが課題だったが、今はゴールのない挑戦。エンジニアとしての知識を生かしつつ、新たな営業の形を確立し、日系企業の飛躍をサポートしていきたい」と山下は意気込んだ。
(取材協力:NNA)
※本インタビューは2019年1月現在の内容です。