バラバラだった海外拠点のERPを統一 各拠点を横並びで比較・分析して経営判断をスピードアップ

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工場などで広く使われている積層信号灯で国内トップシェアを誇る株式会社パトライト(以下、パトライト)が、次の成長分野として注力しているのが海外事業だ。アメリカ、ドイツ、シンガポール、中国、韓国、台湾、タイ、メキシコに現地子会社を設立し、販売ネットワークを拡大してきた。これらの海外拠点の業務やデータを統一する基盤として、ビジネスエンジニアリング(B-EN-G)が提供する海外進出企業のための会計/ERPクラウドシステム「mcframe GA」を導入。拠点ごとの販売傾向を横並びで比較しながら的確な手を打つなど、経営判断の迅速化に大きく貢献している。

グローバルで使えるERPをクラウドで導入 多拠点への横展開を自社主導でスムーズに実行

複数の拠点を横並びで比較したデータ集計や分析ができない

パトライトの歴史は、1955年に高性能マイクロモーターの開発に成功し、その後自社製モータを使った回転警示灯の製造を開始したことに始まる。当初はパトカーなどの車両向けが主なターゲットだったが、後に市場が拡大していったのが製造業だ。工場内の設備・機器の稼働状況を赤・黄・緑の3色で伝える積層信号灯が開発され、急速なペースで普及していった。さらに近年は、こうした回転灯や信号灯の技術にネットワークを融合し、多彩な表現方法を駆使した情報伝達・可視化の手段となる製品やサービスを市場に提供している。
パトライトがさらなる市場拡大に向けて重視しているのが海外市場である。同社 海外営業本部 海外営業推進部 海外ロジスティック企画課 課長の堀 信人氏は、「私たちは積層信号灯の国内市場ですでに高いシェアを有しており、今以上にシェアを上積みするのは簡単なことではありません。一方、海外では市場に浸透しきっているわけではなく、言い換えれば成長の“伸びしろ”は、海外事業にあります」と語る。

実際に同社は、これまで世界中に拠点拡大を行い、現在ではアメリカ、シンガポール、中国、ドイツ、韓国、台湾、タイ、メキシコに現地子会社を設立している。だが、販売ネットワークの拡大を行う一方で大きな課題も存在していた。「拠点ごとに異なる会計・ERPシステムが導入されており、経営判断や販売分析のために必要なデータをタイムリーに入手できませんでした。各拠点から送られてくるデータはフォーマットが統一されていなかったため、品目マスタのカテゴリや並びも異なるなど、複数の拠点を横並びで比較しながらデータ集計・分析を行うことができませんでした」(堀氏)

すべての海外拠点の会計業務と販売データの統一を目指す

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株式会社パトライト
海外営業本部
海外営業推進部
海外ロジスティック企画課 課長
堀 信人 氏

こうした背景からパトライトが2014年から推進してきたのが
ERPパッケージの刷新である。「mcframe GA」をベースに、すべての海外拠点における会計業務および販売データの統一を目指すものだ。
「同時期に、生産管理や原価管理のシステムとして本社側でmcframeの導入を進めており、同じB-EN-Gが海外拠点向けに提供するクラウド対応のERPシステムとして、mcframe GAに注目していました。少人数のスタッフで経理・会計業務を回さなければならない各海外拠点において、規模感やコストなどの観点からも最も“身の丈”にあっていると判断したのがmcframe GAです」と、堀氏は選定理由を語る。

ただし、ERPの刷新には多くの困難が伴う。これまで慣れ親しんだ業務のやり方そのものが抜本的に変わってしまうからだ。特に同社は業務の標準化を求めただけに、既存業務とのギャップは大きくなる。「せっかくERPを刷新しても、従来の業務のやり方に合わせた作り込みを行ったのでは意味がありません。カスタマイズは現地ごとの法規制対応など必要最小限に抑え、データだけでなく業務そのものも統一したいと考えました」(堀氏)
業務の変更が強いられれば、現地からの反発も声が噴出しかねない。その中でパトライトがとったアプローチはユニークだ。小さな拠点で導入実績をつくって徐々に大きい拠点に横展開していく方法を取らず、最初の拠点はあえて規模の大きいアメリカを選定した。「業務の規模が大きく、システム導入の際に検討事項が最も多い拠点で導入作業を行えば、他拠点へ横展開する際にそこで得たノウハウや方法論を流用して、導入をスムーズに進められるだろうと考えました」と堀氏は強調する。

同社はこの難易度が高い取り組みを、B-EN-Gのサポートも得ながら進めていった。「B-EN-Gのコンサルタントには、現場に張り付いてmcframe GAの操作をサポートしてもらったほか、現地と本社側それぞれで実現したいことを踏まえて、システムをどううまく使っていくかの相談にのってもらいました。現地での質問にも、その場ですぐに回答をもらえたので非常に助かりました」と堀氏は語る。こうして導入作業を進める中で、次第に現地スタッフも協力的になり、予定通りアメリカでのパイロット導入を完了させることができた。

経営判断をスピードアップ 月次決算の短縮化にも貢献

アメリカから導入を始めたことが功を奏し、それ以降はB-EN-Gからは最小限のサポートのみで、ほぼ独力にて全海外拠点へmcframe GAの横展開を進めることができた。2019年に全拠点導入が完了したmcframe GAは現在も安定稼働を続けている。システムがシンプルな画面構成のおかげもあり、スタッフの入れ替わりが激しい海外において新任担当者の業務定着にも寄与しているという。

具体的な効果として、データのフォーマットや粒度がグローバルで統一され、各拠点に個別に依頼しなくても必要なデータを必要なときに本社側からいつでも入手できるようになったことが挙げられる。製品カテゴリごとの販売分析や目標設定をタイムリーに実施できるようになったほか、海外拠点の貸借対照表や損益計算書も国内と同等のレベルまで高まり、キャッシュフローや在庫量の変動もきめ細やかに把握できるようになった。
「拠点ごとの販売傾向を横並びで比較しながら的確な手を打つなど、経営判断は大幅にスピードアップしました。これまで時間がかかっていた月次決算を5営業日程度に短縮するなど、業務効率化にも大きく貢献しています」(堀氏)

今後に向けてもパトライトは、データ分析・活用の範囲をさらに拡大していく考えだ。「品目マスタや顧客マスタの見直しなども進めており、例えば、あるお客様に対する販売が代理店経由、直接営業どちらなのかを把握できるようにするなど、より多角的な観点から分析精度を高めていきたいと考えています」と堀氏は語る。データドリブンのタイムリーな経営判断をmcframe GAで実現することで、海外事業の拡大にさらに弾みをつけようとしている。

※本事例は2022年11月に取材したものです。

導入企業概要

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1企業理念にもある「安心・安全・楽楽」をカタチとし、新たな付加価値を加味したユニークな製品やソリューションを提供し続けることで、情報伝達用報知機器の「回転灯」や「信号灯」の国内市場において約70%のシェアを確立。2020年には経済産業省認定「新グローバルニッチトップ企業100選」にも選出。

商号 株式会社パトライト
創業 1947年1月
資本金 3億円
従業員数 860名(連結2022年4月末)
事業内容 「光」「音」「文字」を活用した報知機器で、生産現場やオフィス、緊急車両などの幅広い分野へ、見える化にまつわる機器や「かんたんIoT ソリューション」を提供。

企業ウェブサイト

 

導入製品

mcframe GA
※クリックすると製品サイトに移動します。

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