インドネシア法人でのクラウドERP導入 Before/Afterを語る (後編)
クラウドERP採用の経緯について
B-EN-Gインドネシア 佐々木:
2020年の4月くらいからクラウド型国際会計&ERPサービス「GLASIAOUS」の導入検討を開始し、決定したのはその年の6月くらいで、7月から導入を始め、3か月間で導入。10月~12月に平行稼働、2021年1月から単独稼働しました。ただ、B-EN-Gインドネシアは自分たちで会計処理をやっているわけではなく、朝日ネットワークスさんの協力が不可欠です。
朝日ネットワークス 稲田氏:
2018年からGLASIAOUSを知っていました。当時は私たちの会計事務所として本格的に使っていくというよりは、お客様にご紹介する会計システムの一つとしての位置づけでした。2020年6月からB-EN-Gインドネシアの導入に際し、実際に使って財務諸表を作ってみるという点において、インドネシアでは私たちが第一号だと思います。導入するにあたっては、他の会計パッケージと同様、弊社がすでに使っている会計システムとGLASIAOUSを平行稼働させ、最終的に結果が一致する事を確認していきました。2020年度の財務諸表は、既存のシステムで作ったものを正式なデータとしていますが、2020年の途中からはテスト導入したGLASIAOUSを使って会計記帳をしています。
B-EN-GインドネシアがGLASIAOUSに変更したいと言ったときの、朝日ネットワークスが感じた印象について
朝日ネットワークス 岡本氏:
GLASIAOUSのシステム自体については、日本への出張した際に、B-EN-G本社の方と打ち合わせをしたり、セミナーを一緒に開催したこともありましたので、システムへのある程度の馴染みはありました。しかし実際に現地で自計化に向けて導入サポートをさせていただく際に、B-EN-G関係者にはやや失礼なもの言いになりますが、スタッフの方がGLASIAOUSへの移行についてどの程度コミットいただけるかが心配でした。
B-EN-Gインドネシアの佐々木さんとの話し合いを通じて「きっとやっていただけるはず」という心象形成ができましたので、導入サポートをお受けすることになりましたが、GLASIAOUS導入に対するコミットメントがいただけないで、結果的に導入が中途半端になってしまうような場合の懸念も想定できましたので、「そのときには移行期間として同時並行的に弊社の記帳のバックアップサポートをさせていただきます」というお話はさせていただきました。不測の事態に対するバックアップ体制がないとシステム導入に二の足を踏む経営者の方が多いのではないかと思います。
B-EN-Gインドネシア 佐々木:
そうですね、おっしゃる通りですね。導入するということは入力した仕入や売上のデータがそのまま自動仕訳で変換されるので、B-EN-Gインドネシアのローカルスタッフはそれを意識しながら新しいシステムのアイテムを使って売上登録、仕入登録しなくてはいけないので、慣れるまでは時間がかかると思いました。そしてそれが導入に際しての一つの壁になるのかなと感じました。
また、我々のような形で記帳代行を委託している状況でシステムを導入するお客様は、役割分担が変わることが大きなハードルになると思います。今までは、会計事務所に売上データを渡し仕訳をしてもらえたので、ある意味手間がかかっていなかったのですが、それが販売と仕入のデータが自動仕訳されるとなると、使う側は責任が増えますし、会計事務所側も変な仕訳が出てきたら修正を依頼しなくてはいけない。そういう意味では役割も変わるし作業内容もチェック中心に変わってくるので、会計事務所と自社がお互いに握れていないと難しいと思います。しかし、お互いに役割分担を理解しあえると新たなステージに上れます。
導入プロセスについて苦労した点とは
B-EN-Gインドネシア 佐々木 :
他社への導入サービスを提供するメンバーがそのまま自社の運用メンバーなので、導入の流れは理解していましたし、必要な帳票など丁寧に洗い出しながらやっていたので、自分たちの業務内容をきちんと反映できたと思います。ただ、実際の売上や仕入を入力するメンバーは、導入のセットアップが終わってから関与したので、トレーニング時は、苦労したと思います。
良かった点は、以前より便利になりました。紙を使わないので、そこの費用削減もできました。GLASIAOUS上で承認処理ができるようになったので、手間もかからなく、より早く処理ができるようになりました。システムの仕様によってインボイス番号など複製ができないので、同じ番号が発行されることもなくなり、データの管理がしやすくなりました。ただ、WHTの処理をするときに端数の切り捨て四捨五入の処理がエクセルに比べると難しく、やりにくくなったので、苦労しました。
B-EN-Gインドネシア ティタ:
販売購買の流れに関しては資料の管理、整理がしやすくなりました。以前はGoogleドライブでの管理だったので、今処理がどこまで進んでいるかという進捗状況の把握が難しかったのですが、GLASIAOUSでは簡単にフォローアップできるようになっています。一方、システムの制約によっては、データ入力を間違えると伝票ごと削除しなくてはいけないので、その時だけ伝票番号の採番がスキップしてしまいます。一覧で見てみるとズレてしまうということが課題です。
導入後の効果について、導入によって何が変わったか
B-EN-Gインドネシア 佐々木 :
まずは効果としては営業情報で見積や発注などバラバラになっていたものが繋がった点です。またすぐに現時点でのPLが見れますし、ドキュメントも各データに添付して管理することができるようになったので、非常に業務がはかどるようになりました。
また、B-EN-Gインドネシアでは保守サービスの業務が多いため、各月12分の1ずつ売上を立てるとか、仕入を立てるなどの計算業務をB-EN-G本社経理部の三嘴さんにずっと対応していただいていました。このような計算をサポートする機能がGLASIAOUSにはあり、これによって工数が削減されたのかな、と思っていますが、三觜さんどうでしょうか。
B-EN-G本社 経理 三觜 :
はい、やりやすくなりました。本社側では、そもそも課題であった情報共有がしっかりできる点において効果を感じています。支払依頼などをGLASIAOUS上でB-EN-Gインドネシアのリリィさん達に依頼をしているのですが、それも漏れがなくできるようになりました。また今後は、期末の監査を受ける際に監査法人から細かな質問を受ける際には、GLASIAOUSの情報により分析しやすくなることを期待しています。仕訳帳を見たり、ドリルダウン機能を使えば、PLや科目を見て増減はどこで起こっているのか、という分析はしやすいと思っています。
B-EN-Gインドネシア 佐々木 :
その他にも、インドネシアの制度(請求書にDuty Stumpを貼ってサインと社印を押す処理)ではまだ完全にはペーパレスができないのですが、それ以外の見積書等であればシステムだけでできるようになったのでメリットだと感じています。
また、ダッシュボードも進化していて、債務債権の状況が予定と比べ遅れがあるかなども円グラフで把握できるようになり、気になることがあればドリルダウンし、どの支払いが遅れているかなども確認ができるようになりました。管理者としては非常に助かります。キャッシュも各通貨(円、ドル、ルピアなど)で見ることができ、今ある支払い予定に対して今後どうなるかも見られるようになりました。
B-EN-Gインドネシアは大きな会社ではないので、キャッシュの状況が大事です。過去三か月の収支をグラフで見ることができ、経営者として特に期末の数字が気になる頃には特に助かります。
営業面でいうと、過去何か月分に絞って売上や得意先の傾向を見たいときには、正確なデータがあるので分析するのに大変助かっています。以前は月次の財務諸表が確定するまでに、1か月以上かかっていたのですが、修正作業などが少なくなり、初回の提示で確定できるため、かなり時間が短縮されました。
朝日ネットワークス 稲田 氏:
B-EN-G本社とのやり取りの変化としては、3者間で行う情報のやり取りに二度手間やロスが少なくなったことです。
またインドネシアと日本の時差や祝祭日の違いも乗り越えることができるようになりました。例えば、以前では日本がゴールデンウィークの場合、こちらからこの資料が足りませんよと連絡をいれていても、B-EN-G 本社の三觜さんにその連絡が届いていなかったり、というようなことがあり、決算の早期化がなかなか難しい状況でした。財務諸表の作成をいかにスケジュール通り終わるかというところも決算の早期化の重要なポイントになります。
また、人事関連などローカルスタッフに教えたくない内容以外のデータのやりとりは、すべてGLASIAOUS上にあるため、作業が進むというのが大きく変わった点です。「資料が不足している」といったやり取りに時間を割くのではなく、本質的な税金についての質問などに時間をかけられるようになったのも大きなポイントです。
さらにローカルスタッフ側の意識も変化がみられると思います。今までは私とB-EN-G本社の三觜さんとでボールを持っている時間もあったため、例えば資料がなかったときに、ローカルスタッフ側では、「まだ日本人マネージャーが資料を持っているから、私たちはステイ」なので、他の仕事を優先すると、ある意味デッドラインを守るという意識が希薄であったと思います。現在は担当の方にこのデータを上げてくださいと言えるようにもなりました。
朝日ネットワークス 岡本 氏:
制度が変わる度にタイムリーにシステムにアップデートされると、「このシステムを使っていて便利でした」と裏付けできるのですが、インドネシアの複雑な難しい制度の中でGLASIAOUSがどういった形で浸透していくかについてはまだ紐解けていない状況ではあります。しかし、使っているスタッフによると少しずつマイナーチェンジされていて現地の制度に馴染んできている状況になっているとのことです。
並行稼働の真っ只中で起きた、インドネシアのロックダウンによる影響について
B-EN-Gインドネシア 佐々木 :
事業に対して、コロナの影響はほとんどないです。お客様に対しても完全にリモート導入することが多くなってきており、自社導入においても支障はなかったです。朝日ネットワークスさんとの調整も全てweb会議でやりまして、対面での打ち合わせは1回もなかったです。それでも稼働ができました!
また、今まで承認の処理は紙にサインしていたので、オフィスに行ってリリィさんやティタさんが紙で持ってきたものにサインをするという流れでしたが、今は「承認してください」というメッセージをGLASIAOUS上でやり取りできるので、GLASIAOUS上で確認し承認をしています。
承認に必要な注文書や、見積書なども全てGLASIAOUS上で管理されているため、わざわざ紙に出して承認する必要がなく、在宅ワークで離れていても不自由なく承認処理ができています。コロナ禍にあってもシステム上で承認ができるため業務が止まらないメリットを感じています。
今後の計画や展望について
B-EN-Gインドネシア 佐々木 :
自計化は正直あまり進めてはいないですが(笑)、自分たちが仕事として会計システムを導入しているということもあって、自社をシステム化したかったという思いは強かったです。しかしながらインドネシアでは法律などがよく変わり、税務の専門知識が必要なので、朝日ネットワークスさんに引き続き協力をお願いできればと思っています。今後、規模も大きくなって自社で税務など分かる人が入社すればその方向性も見えてくると思います。
B-EN-G本社 経理部 小峰 :
現地法人の経営の形態から話しますと、大きい会社であれば最初から経理部門を置いて自社で運営するというのが理想的ではありますが、当社のように小規模な現地法人については、管理部門をどう位置づけするのかというのが課題になります。インドネシアは特に税金の問題が非常にクリティカルにでますので、朝日ネットワークスさんに記帳代行していただきつつ、本社でも経営や資金面を管理し、3社でうまくバランスを取りたいと考えています。GLASIAOUSをベースにしたことで、この形態での運用が非常にやりやすくなったかと思っています。将来的にB-EN-Gインドネシア側で経理の人材などを育てていくというのはありえますが、そこは規模拡大のペースによって左右されると思います。現地法人の進出の在り方としてはB-EN-G本社とB-EN-Gインドネシア、そして朝日ネットワークスさんがGLASIAOUSをベースに情報共有し合う、この運用形態は他のお客様の参考にしていただけると思っています。
※本インタビューは2021年12月現在の内容です。